PMへのジョブチェンジを考える

投稿者 おおかゆか 2009-01-21 13:15:00 GMT

プロフィールにも書いてあるように私は現在、絶賛就職活動中なのだが、思いがけずにスムーズに行かず苦戦を強いられている。
その原因はハッキリしていて、給与の面で折り合いがつかないこと。

ちなみに私のキャリアであるが、Web系サービスの開発エンジニアとしての経験は8年以上。
それ以前の時期も含めた通算の転職経験は3回で、インターネットサービス企業での経験が一番長い。
言語は主にPHPを使っていたが、JavaやPythonの開発経験もあり、Perlは読むだけなら可能。最近は自主的にRuby(とRails)を勉強中。

手がけたサービスはイントラネットの社内ツールから、大手ポータルサイト内の250万会員および350万PV/Day規模のサービスまで様々。
要求定義はもちろん企画段階から携わった経験もあり、リーダー経験は最高3つのグループを同時に管理していてその当時のメンバーは合計10名くらい。
さらには小規模ではあるが自分でHTML&CSSをコーディングして、GIMPやInkscapeでWebデザインした経験もある。

そんな感じの三十路越え女が、RubyかPHPの開発の仕事を探しているわけだが、前職の給与水準程度を要求すると、ほとんど決まりかけていたところでも断られてしまう。
具体的に金額を言うと、年収650万以上。

私が経営者なら、10年近くのキャリアがあってさらに現時点でRailsで開発できるようなエンジニアがたったの年650万で雇えるなら安いもんじゃないかと思うのだが、まちがっているのだろうか?

そもそもプログラマとは、その生産性が個人レベルで時には100倍近くの差が開くこともあるような特殊な職種であるわけで、そこまで極端な例ではなくても普通に2~3倍違うことはザラにある。
世のプログラマの半数以上は、自腹で技術書を買ったり自主的に技術カンファレンスや勉強会に参加したりすることもなく、そもそも家にPCがないとかいう輩までいる。

経営者の視点で考えれば、凡庸なプログラマを2人雇うくらいなら、その人件費でモチベーションが高くそこそこ優秀なプログラマを1人雇ったほうがオトクなことは自明の理だと思うのだが。

今の時点でRubyができたりPythonができたりするプログラマは、技術に対する愛情とモチベーションを兼ね備えたプログラマだと思う。そういう人の生産性は経験上、非常に高い。
技術に対する嗅覚が鋭いので、その状況に適したツールやライブラリを探してきてうまく省力化したり、コーディングも基礎ができているのでマージやメンテナンスが容易であったりする。

そのあたりが苦手なプログラマの場合、彼らは一見忙しそうに仕事をしているように見えるが、その多くは自分で作り出したタスクであり、生産性の高いプログラマなら最初からやらずに済んだものである。
また書いたコードが非常に汚かったりすると、あとあと自分はおろか他人の生産性まで下げてしまう。

渡辺千賀さんのブログ記事「シリコンバレーの給与水準」「シリコンバレーの給与水準再び」によると、シリコンバレーでは新卒のエンジニアの年収はいきなり800万円からで、さらに全体の平均的な年収になると1,600万円を超えるという。
日本で年収800万もらっているエンジニアがいったいどれだけいるだろう。

希望年収を聞いた途端、手の平を返した会社のエンジニアの平均的給与水準を聞いてみたが、年500万以下だという。
その会社はエンジニアが全然足りなくて困っていると言っていたが、さもありなんだ。Rubyエンジニアがその値段で買えると本気で思っているとしたら、あの会社はこの先ずっとエンジニア不足に悩まされるだろう。

就職活動が行き詰まった感があったので、人材紹介会社に登録して相談に行ってみた。
そこで率直に、私のキャリアなら年収はいくらくらいが妥当か聞いてみたが、その担当者個人の意見としては700万~800万くらいになるのだそう。
ただし、開発のエンジニアではなくPM(プロジェクトマネージャ)として。

私くらいの年齢でかつ年収650万円より上を希望するのであれば、エンジニアではなくマネージャでなければ案件が非常に限られてくるとのこと。

そういえば前職でも、最後の方はコーディングどころか設計の機会までが激減して、協力会社からの常駐社員の管理ばかりやっていたような気がする。
そうか、あれは日本のIT企業でごく一般に行われる、エンジニアからマネージャへのキャリアルートだったのか。まさかネットサービスの会社でも同様とは思わなかったので、全然気づかなかった。

日本では通常、マネージャは専門職ではなくエンジニアがキャリアアップしてなる上級職とされる。
開発のエンジニアはPG(プログラマ)とSE(システムエンジニア)に分類され、SEが設計やスケジュール管理をし、PGはSEの設計通りにコーディングを行う最も下っ端の存在とされるのは周知の通り。

PG→SE→PMというのが、日本の正しいソフトウェアエンジニアのキャリアプランとされるわけだが、そのおかげで実際に手を動かしてモノを作るプログラマの給料は低く抑えられることになる。

ただしこれは日本特有の特殊事情であり、海外では日本で言うSEは存在せずエンジニアはエンジニア。設計から実装まで一手に引き受ける職種であり、そしてエンジニアはキャリアを積んでもエンジニアのまま。
マネージャは新卒時からマネージャであり、キャリアは通常、別のルートをたどる。

だから若くて給料もそこそこのマネージャの管理の下、年収2,000万のスーパーエンジニアが開発作業を行うという事態も、特にめずらしいことではない。
私もずっとネットサービス業界で少人数チームで早いサイクルの開発ばかりしていたので、それを特に不思議とも思わない頭になっていたのだが、どうやら日本の一般的な労働市場ではこの考え方は全く通用しないようだ。

ここで採ることのできる選択肢は2つ。
年収600万そこそこで頭打ちになることを覚悟して好きな開発の仕事をやり続けるか、マネージャに転身して年収アップを図るか。

前の私なら前者を選んだかもしれないが、自分で個人事業を興したために、常に帳簿をつけてお金の出入りの計算を強いられた経験を経た今となっては、年収凍結は受け入れられるものではなくなってしまった。やっぱりお金は大事だ。給料が低いと、仕事に対するモチベーションまで低くなる。
よって選択は必然的に後者。PMへのジョブチェンジを選ばざるをえない。

まあ今考えてみれば、メンバーを抱えてのプロジェクト管理も嫌いな仕事ではなかった。
頼りないマネージャのせいで嫌な思いをした過去があるので、どうすればメンバーが成長できる環境で仕事ができてプロジェクトがスムーズに進むのか考えるのも楽しかったし。

ただ開発の現場から離れてしまうのは、やっぱり未練がある。
しょうがない。そういうのは趣味の世界でオープンソースをやるとかして、仕事は仕事として割り切ることにしよう。

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コメント

  1. 通りすがり社長 発言 1 day later:

    はじめまして。
    ひょんなことからこのブログにたどり着いて、そしてこの記事を見させてもらいました。

    私のバックグラウンドはITではないんですが、思うところがあってRails(HTML,CSSも)を勉強し始め、設計から実装、デザインまで自分でやって去年サイト運営を始めました(一応法人化しています、代表一人の会社ですが)。Rails暦1年のペーペーです。サイトからの収益は今のところ皆無です(笑)

    もし私に資金的余裕があれば、多少無理してでも、おおかゆかさんにオファーを出していたと思います(残念ながら現状ではとても無理ですが。)。本当に優秀な人材というのはどの分野においても他の人の何十倍も価値があるものだと思います。それだけの経験とスキルをお持ちなら決して高くない年収だというのには同感です。

    あと私は大会社の開発工程がどのようなものなのか体験したことがないのでわからない点もあるのですが、自分でやってみて思うのは、やはり設計から実装まで一貫して手がけてこそエンジニアだと思うのです。日本の環境が特殊だというのは感覚的にわかる気がします。

    少し話がそれましたが、記事を読んで、開発の仕事続けて欲しいなって思いました。好きこそ物の上手なれとも言いますし(笑)良い条件のところがあればいいですね。いつか一緒に仕事ができれば嬉しいです。がんばってください。私もがんばります。

  2. おおかゆか 発言 1 day later:

    通りすがり社長さま

    この事態を招いたのは、エンジニア自身にも原因があったと思います。自省も含めて。
    会社に所属しているという安定の中で飼い殺されて、スキルに見合う正当な報酬を要求しようとしてこなかった。技術屋は世俗的な欲を追求しないもの、みたいなポーズもあったかもしれません。

    ただこうなってしまった状況を覆せる力は私一人にはありませんし、今は流されつつもそれを利用するしたたかさが必要かなと思います。

    それにしてもバックグラウンドなしの状態からRailsを勉強され、おひとりでサイトを作ってしまわれたんですか。すごいですね。その気概とモチベーションの高さに脱帽です。

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